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中国経済が深刻な調整局面に入る可能性について   (2008.4.25)


株式会社電通
顧問 牛嶋俊一郎

 昨年9月に、本サイトで中国経済が遠からず調整局面に入る可能性が高いことについて投稿させていただいたが、その懸念が本年半ば以降にも現実のものとなりそうな状況が生じていることから、本サイトは経済予測的な議論を行う場ではないことは承知の上で、あえて、再度投稿させていただくこととした。昨年9月の拙稿での主な論点は、中国におけるガバナンスの問題を背景として、


  1. 実物経済面では持続可能でない輸出の急増と過剰な投資、金融面では資産バブルの急速な膨張というマクロ経済的な不均衡が深刻化しており、何らかのきっかけで中国経済が調整局面に入る可能性は否定できない、
  2. そのきっかけとしては、1)輸出の伸び率の大幅な低下とそれに起因する過剰設備の調整、2)株式市場の調整等があげられる

というものであった。


 その後の経済の動きを見ると、輸出面では、サブプライム問題に端を発する欧米経済の減速が長引きそうであり、今後しばらくの間、中国の輸出の伸びが大幅に低下する可能性が大きくなった1 。さらに上海の株式市場は4月上旬現在、昨年10月のピークと比べて40%以上下落しており暴落といってもいい状況を呈している。

 このように中国経済が調整局面に入るきっかけとして拙稿で上げていた事象が現実に起こってきている。本論の目的はこうした状況が量的に見て中国経済にどの程度の下方調整圧力をもたらし、どの程度深刻な影響をもたらしそうかを検討することである。状況の変化に対する中国経済自体の反応に未知な点が多いことやデータが不十分なことなどから、あまり明確なことが言えないものの、輸出の停滞が長引けば本年後半以降、深刻な調整局面に入る可能性がかなり高いというのが筆者の判断である。なお、今年に入ってから3月末までの時点で、中国本土市場における株価の下落に伴う株式の時価総額の減少は約12兆元(4月2日付け中国証券報)で、2007年のGDPの約半分に達している 2。この株の急落により当分の間、支出を削減するつもりの人が多いという最近のアンケート調査(4月2日付け上海証券報)にもあるように、人々の支出に何らかのマイナスの影響があると見られるほか、銀行や企業のバランスシートの悪化から来る悪影響もあると考えられる。


 ただし、それがどの程度のものになるのか筆者には推計の手がかりがないので、以下では輸出の停滞の影響のみを検討する。とりあえずのマグニチュードを掴むことを目的に、データ的にも問題含みの簡便法で推論を行ったものであり、批判は当然に予想されるが、筆者としては推論をより正確なものにするためのデータの利用可能性や文献的なものに関して示唆を頂ければありがたいと考えている。


 1 本年2月の中国の輸出の伸びは前年同期比で6.5%増と昨年の25.7%増から大幅に低下した。ただし、大雪等の影響も考えられることからこれをもって直ちに中国の輸出の伸びに急ブレーキがかかったと即断することは出来ない。
 2 中国の上場企業の株式のうち流通している株は全株式の3分の1程度である。従って、今年に入ってからの流通株の評価損は12兆元の3分の1=4兆元で2007年のGDPの6分の1程度ということになる。

1. 問題の出発点:中国における最近の輸出と固定投資の急増

 中国では2002年以降2007年までの間、輸出はドルベースで年率25〜35%(実質では20〜30%程度)で伸び、固定投資は名目で25〜30%(実質で20〜30%)で伸びてきた。その結果この5年間で、GDPの輸出比率は20%弱程度から40%弱程度へ、固定投資比率は30%台半ばから50%台半ばへと共に約20%ポイント増加している。2007年の経常収支の黒字がGDPの10%以上にまで膨らんでいること等に照らしてもこの状況が今後長期にわたって持続可能であるとは考えがたく、何らかのきっかけで調整局面が訪れることが予想されたところであるが、そのような中、サブプライム問題に端を発する欧米の景気停滞という外的ショックが発生した。以下は世界的な景気の停滞に伴い中国の輸出の伸びが大幅に鈍化した場合、中国経済にどれほどの影響を及ぼすかを推論したものである。


最近の固定資産投資と輸出の伸び率
最近の固定資産投資と輸出の伸び率
中国の外貨準備、経常収支黒字、人民元レート
中国の外貨準備、経常収支黒字、人民元レート
中国と日本の固定資本/GDP比率の推移中国と日本の固定資本/GDP比率の推移 中国と日本の輸出/GDP比率の推移
中国と日本の輸出/GDP比率の推移
出所 内閣府「海外経済データ」等


2. 設備投資(フロー)と供給能力(資本ストック)の関係と今後の供給能力の伸び

(1)輸出部門と固定資本投資関連部門の供給能力の伸び

 上述のように過去5年間、輸出は実質で毎年20〜30%程度の率で伸びてきている。中国経済はほぼフル操業の状態が続いており、また、製造業部門も含めて設備投資が大幅に伸びていることから、輸出部門の供給能力はほぼ輸出の実績の伸びと同程度に伸びていると見てよいであろう。ここでは推論の精度に難があることを考慮し、2007年の供給能力の伸びを最近の実質輸出の伸びの下限である20%と仮定する。同様の考え方に立って、固定資本投資関連部門についても2007年の供給能力の伸びを最近の実質の伸び率の下限である20%と仮定する。

(2)2008年、2009年の供給能力の伸び

 設備投資(フロー)と供給能力(資本ストック)の関係から、今後の設備投資(フロ−)が少々変動しても2008年、2009年の供給能力(資本ストック)の伸びに与える影響は軽微であると考えることができる。まず、2008年の供給能力の伸びは、設備投資の実施から能力増につながるまでのラグを考慮すれば2007年の設備投資によって既にほぼ決まっていると考えてよいであろう。2007年の設備投資の伸びが依然として高かったことも考慮すれば、2008年度の供給能力の伸びは輸出部門、固定資本投資関連部門ともに2007年と同じ年率20%と仮定することで、過大推計にはならないであろう。さらに、設備投資(フロー)と供給能力(資本ストック)の関係から、2009年の供給能力の伸びは2008年の設備投資がよほど大きく変動しない限り、2008年の伸び率から大きく変化することはないと考えてよい。以下では輸出部門と固定資本投資部門の供給能力が2008年、2009年ともに最近年の実績伸び率の下限である20%で伸びると仮定して議論を行う3



 3 もちろん計量モデルを構築すれば、このようなラフな議論を展開する必要はないが、計量モデルがなくとも、重要なポイントさえ押さえれば、一次近似的な数字を使って基本的な傾向をつかむことは十分に可能である。

3. 輸出の停滞がもたらす輸出部門の供給過剰能力の程度

 2008年、2009年と連続して実質輸出が10%の伸び(ケース1)と5%(ケース2)であった場合の輸出部門の過剰能力を計算すると次のようになる。供給能力が20%で伸びている場合、単純な話であるが、実質輸出の伸びが5%(最近の輸出価格の動向からすればドルベースの伸びとしては10%に相当)に落ちるとかなりの過剰能力が発生することが分かる。




<輸出部門の過剰能力>
  2008年 2009年
ケース1(輸出10%増) 8.3% 16.0%
ケース2(輸出5%増) 12.5% 23.4%


4. 輸出の停滞の経済全体への影響度

 中国の輸出のGDP比は2007年で38%程度であるが、このウエイトに輸出の変動をそのまま乗ずることによって、輸出の変動による経済への影響を計ることは適当ではない。中国の場合、輸出のために必要な輸入がかなりの額に上るので(加工貿易)、輸出の変動による国内経済への影響を見る場合、これを調整する必要があるからである。ここでは付論での検討に沿って、輸出の変動の半分が輸入の変動によって相殺されると仮定して計算を行った。この計算によれば、実質輸出の伸びが10%(5%)に落ちた場合の経済への直接的なインパクトは2007年のGDP比で、2008年は1.9%(2.9%)、2009年は4.4%(6.4%)ということになる。



<輸出停滞の経済全体への影響の計算。2007年のGDP比で表示>
    2007 2008 2009
(1) 輸出能力(20%増) 38 45.6 54.7
(2) 輸出実績      
  ケース1 10%増 38 41.8 46.0
  ケース2  5%増 38 39.9 41.9
(3) 差額=(1)−(2)      
  ケース1( )内は過剰能力   3.8(8.3%) 8.7(16%)
  ケース2( )内は過剰能力   5.7(12.5%) 12.8(23.4%)
(4) 輸入分を調整したインパクト=(3)*0.5      
  ケース1    1.9 4.4
  ケース2   2.9 6.4

(経済成長率への直接的影響)

 上記のインパクトを成長率の形で表現するために、GDPが11%で成長し、そのうち輸出が20%で成長している経済で、輸出が突然10%(5%)の伸びに落ちた場合の成長率を計算すると2008年で9.1%(8.2%)、2009年で8.8%(7.9%)となる。現在の中国の構造では実質輸出の伸びが5%まで落ちると直接的インパクトを見ただけでもかなりの成長率の低下があることが見て取れる。



<輸出停滞の経済全体への影響の計算。2007年のGDP比で表示>
(1) 基準GDP(11%成長) 100 111 123.2
(2) ケース1の影響   1.9 4.4
(3) ケース1のGDP=(1)−(2) 100 109.1 118.7
(4) ケース1の成長率%   9.1 8.8
  ケース2の影響   2.9 6.4
(5) ケース2のGDP=(1)−(4) 100 108.2 116.7
  ケース2の成長率%   8.2 7.9


5. 輸出部門の設備投資停滞がもたらす影響

 輸出の停滞は輸出部門の過剰能力をもたらし、輸出部門の設備投資抑制につながる。輸出部門の設備投資がどの程度の割合かが不明であるが、2008年1,2月の社会固定資本投資全体に占める製造業のウエイトは約3割である。中国経済における輸出のウエイトが高いことから、ここでは製造業投資の3分の1程度が輸出向けであると見なした。つまり全社会固定資本投資の約1割が輸出向けと見なしたことになる。また、輸出部門の設備投資は全体平均と同じ20%で伸びてきていると仮定した。通常、設備投資(フロー)の調整が始まるとストックの伸びが十分に低下するまで設備投資は減少する(前年比でマイナスになる)局面が続くが、ここではとりあえず、設備投資が横ばいの場合のインパクトを計算した。非常に単純な仮定計算であるが、その大きさは2007年のGDP比で2008年1.3%、2008年2.8%となる。その時の輸出部門向けの設備投資供給部門の過剰能力は2008年で16.7%、2009年で30.6%になる。



<上記の計算:輸出部門向け投資は全固定資本投資の約1/10で、2007年GDP比5%とした。>
  2007 2008 2009
(1) 輸出部門向け投資(20%増) 6.0 7.2
(2) 2007年比増分   1.0 2.2
設備投資が横ばいで推移した場合の輸出部門向け投資の供給能力過剰=(2)/(1)   16.7% 30.6%


6. 輸出と輸出部門の設備投資の停滞の直接的インパクトの合計

 以上を合計して、輸出が停滞し輸出部門向け設備投資が横ばいで推移した場合のGDPへの直接的影響を計算すると、2007年GDP比で、2008年2.9〜3.9%、2009年6.6%〜8.6%となる。



<輸出と輸出部門の設備投資停滞のGDPへの直接的インパクトの計算>
    2008 2009
輸出の停滞: ケース1 1.9 4.4
  ケース2 2.9 6.4
輸出部門向け設備の停滞 1.0 2.2
上記の合計: ケース1 2.9 6.6
  ケース2 3.9 8.6


 本来の成長率が11%であった場合で、輸出の停滞の影響を織り込んだ成長率としては、ケース1が2008年8.1%、2009年7.9%、ケース2が2008年7.2%、2009年6.9%となり、直接的影響だけでもかなりの成長率の低下が起こる可能性があることが見て取れる。 もちろんこの数字は設備投資の動きいかんによって大きく変わりうる。通常、設備投資の動きが実体経済の動きに若干のラグを持って現われること、さらには、いったん調整が始まればその振幅が大きいことからすれば、実際の影響は下表の計算より2008年度は小さく、2009年度は大きく出る可能性が高いであろう。



<成長率への直接的影響の計算>
(1) 基準GDP(11%成長) 100 111 123.2
(2) ケース1の影響   2.9 6.6
(3) ケース1のGDP=(1)−(2) 100 108.1 116.6
  ケース1の成長率%   8.1 7.9
(4) ケース2の影響   3.9 8.6
(5) ケース2のGDP=(1)−(4) 100 107.2 114.6
  ケース2の成長率%   7.2 6.9


 以上に加えて、輸出及び輸出部門の設備投資の低下のもたらす乗数効果も無視できないものがあると思われる。上記の表でも分かるとおり、仮に設備投資が2008年、2009年と横ばいで推移すれば、輸出部門向け設備投資供給部門の過剰能力は2009年で30%を超える水準になり、そうなれば設備投資供給部門自体の投資調整が深刻化することになろう。ただし、中国経済でどの程度の乗数効果が見込まれるのか手元にはほとんど資料がないので、ここでは織り込んだ計算は行わないが、1.5程度の乗数効果を織り込むだけで輸出低下の影響の深刻度は飛躍的に強まることになる。そもそも過剰投資が指摘されている経済で、外部的なショックによりかなりのマイナスのインパクトが経済に加われば、大規模な設備投資調整が起こる蓋然性は高いと考えられよう。



7. 資産バブルの崩壊が起こっているとすればそのインパクトも心配になる。

 本論の最初に言及しとおり最近の株式市場の暴落の影響も無視できないと思われるが、今後株価の低迷が続き、これに輸出の停滞によるマイナスの影響が加われば、従来から懸念されていた中国での資産バブルの崩壊ということにもつながりかねない。そうなれば、経済社会の全般的な混乱という事態さえありえないことではないかもしれない。



上海A株指数
上海A株指数
出所;内閣府「海外経済データ、中国情報局ホームページ


(おわりに)
 以上の推論はかなり大まかなものであるが、現在の中国経済の構造の下では、輸出の伸びが大幅に低下すればその直接的な影響だけでもかなりのものになることが見て取れとれよう。もちろん現時点で欧米の景気がどれほど悪化し、どれほど長引くのか、それにより中国の輸出がどれほど停滞するのかについて明確なことは言えないが、通常、欧米の輸入の所得弾性値はかなり大きいことから、景気の悪化による所得の伸びの低下はそれ以上の輸入の伸びの低下をもたらすことは間違いないであろう。さらに、中国側の事情としては、インフレ抑制のためにこのところ元の対ドルレートの切上げ率を加速させており、インフレが沈静化しない状況で今後ともかなりの率で切り上げが続けられる可能性がある。これは中国の輸出の競争力にもマイナスの影響を与えるであろう。さらに、本論では考慮に入れなかった株式市場の暴落の影響もある程度はあるであろう。また、全般的な経済の状況が怪しくなれば、上海や広州等でかげりの見え始めた不動産市場の先行きも懸念される。今年の中国はオリンピックの年ではあるが、輸出の停滞が長引けば、経済が深刻な調整局面に入る可能性は否定できないと思われる。




(付論) 中国の輸出の変動はどの程度輸入の変動によって相殺されるか

 中国の輸出は輸入品を加工して輸出する割合が高いことから、輸出の変動による経済への影響を見る場合には輸出と直結した輸入の変動分を調整する必要がある。



1.輸入と輸出および国内需要との関係

(1)輸入と輸出の単純な相関

 過去10年ほどのドル建ての輸入と輸出の単純な相関を見てみると、かつては輸入と輸出がほぼ1対1の関係で動いていたが、最近は輸出の動きの6割強で輸入が動いており、輸出に占める輸入の割合が減少していることがうかがえる。



輸入と輸出の相関(1997-2004)

輸入と輸出の相関(1997-2004)

輸入と輸出の相関(2004-2007)
輸入と輸出の相関(2004-2007)


(2)伸び率で見た輸入、輸出、国内需要(全てドル建て)の関係

下図によって過去10年程度の中国の輸出と輸入の伸び率の推移を見ると、2004年までは両者が非常に密接に動いていることが見てとれるが、2005年以降は両者の動きに次の二つの特徴が見られる。

  1. 輸出の伸びよりも輸入の伸びがかなり低いこと
  2. 伸び率の動きに乖離が見られ、特に2006年、2007年は輸出の伸びが低下する一方で輸入の伸びが増加するという動きとなっていること。

 この二つの特徴は、この数年、輸出に占める輸入の割合が急速に減少しており、輸入が他の要因で動く割合が高まっていることを示唆している。
一方で、輸入と国内需要の間には2003年頃まではあまり強い関係があるともみられなかったが、2004年以降は動きがパラレルになってきており、両者の関係が深まっているように見られる。これは中国国内においても所得の高まりとともに質の高い輸入製品や輸入素材を使った製品への需要が強まっていることを表していると考えることが出来る。



中国の輸出、輸入、国内需要(ドル表示)の推移、前年比、%
中国の輸出、輸入、国内需要(ドル表示)の推移、前年比、%
出所;内閣府「海外経済データ、中国情報局ホームページ


(3)輸入、輸出、国内需要の回帰分析

 上記の観察を踏まえて次のような式を用いて回帰分析を試みた。以下の式の変数は億ドル表示である。



輸入=a+b・輸出 +c・輸出・ダミー+d・国内需要+e・国内需要・ダミー

 観察期間は1997年から2007年で、ダミーは、2003年以前はゼロ、以降は1、2004年以前はゼロ、以降は1、2005年以前はゼロ、以降は1の3つのケースを試みた。結果としては2005年以前はゼロ、2005年以降は1というダミーのフィットが1番よく、以下の結果が得られた。( )内はt値。



輸入=−779(-3.4)+0.865輸出(10.9)−0.767輸出・ダミー(-9.8)+0.068国内需要(1.9)+0.252国内需要・ダミー(8.7)


 この回帰分析の結果によれば、輸出の係数は2004年までは0.865であったものが、2005年以降は0.098に落ち、一方、国内需要の係数は2004年までは0.068であったものが、2005年以降は0.320に上昇している。あまりにも極端な変化であり、観測データも少ない単純な回帰式の係数をそのまま鵜呑みにすることは出来ないが、いずれにしても2005年前後に輸入と輸出および国内需要の関係に構造変化が起こったことがうかがえる。輸出と輸入の関係で言えば、輸出の構造がより国内での付加価値を高める方向に大きく変化し、輸出の変化が輸入の変化で相殺される割合が減少したということである。



(4)2005年以降の加工輸出の割合の減少

 上記の点は、程度の問題は別として下図に見られる2005年以降の加工輸出比率(全輸出に占める加工輸出の割合)の減少でも確認される。



中国の加工輸出比率
中国の加工輸出比率
出所:中華人民共和国国家統計局ウェッブサイト等から


2.輸入による相殺の割合をどの程度と見るか

 本文で述べたように、輸出の変動の経済への影響を推計する上で、輸入による相殺をどの程度と見るかは非常に大きな問題である。ここでは以下のような手順でこの大きさの目安を設定した。



(1) 2004年から2007年までの輸出の増加額と輸入の増加額の比率

 上記の分析から2005年ごろに構造変化が起こったと見られることから、まず、2004年から2007年までの輸出と輸入の増加額を取り、その比率を計算した。


輸出の増加額 6247億ドル
輸入の増加額 3946億ドル
両者の比率  0.632

(2) 国内需要の増加による輸入の増加分の調整

 輸入の増加分には国内需要の増加に伴う分も含まれていることから、いくつかの係数を使ってその推計を試みた。



国内需要の増加額       10070億ドル
国内需要による輸入の増加額
1)上記の回帰式の2004年までの係数0.068を使った場合    685億ドル
2)上記回帰式の2005年以降の係数の3分の1の0.1を使った場合1007億ドル
3)上記回帰式の2005年以降の係数0.32を使った場合 3222億ドル


 国内需要による増分を調整した後の輸入増加額と輸入輸出比率
@)上記1)のケースでは調整後輸入増加額は3261億ドルで輸入輸出比率は0.52
A)上記2)のケースでは調整後輸入増加額は2939億ドルで輸入輸出比率は0.47
B)上記3)のケースでは調整後輸入増加額は724億ドルで輸入輸出比率は0.12


(3) 本論での輸入輸出比率の想定

 中国の輸入はかつてはほとんど輸出で説明できるほどであった。これが次第に国内需要に応じたものも含まれるようになり、また輸出の面からも国内での調達分が次第に増えて、輸出と輸入の関係がかってより希薄になってきたことは確かである。ただし、上記回帰式の係数で示されるほどにドアスティックに変化したとは考えにくいことから、ここでは@)とA)の中間を取って、おおよそ0.5と想定することとした。

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