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ポスト京都への枠組み

鹿島平和研究所理事
中央大学 総合政策学部教授
元経済企画庁事務次官
田中努

11月7日に発表された国際エネルギー機関(IEA)による二酸化炭素排出量の予測によれば2010年には中国の排出量は米国の排出量を抜き、2030年には世界の排出量の25%以上を占めることになる。同じく2030年には中国、インド、及びアジアの発展途上国合計で35%を占め、米国、日本、EU合計と肩を並べると予測されている。京都議定書では先進国と移行国(旧ソ連圏)については2012年までの二酸化炭素排出量の削減目標(1990年水準比で平均5.2%減)を定めているが、発展途上国は削減目標の対象外となっているし、先進国の中では米国、豪州などが未参加である。したがって2013年以降は米国はもとより、中国、インドなどの発展途上国が削減に参加することが不可欠である。11月17日までナイロビで開かれていた第12回気候変動枠組条約締約国会議でもこの問題が議論されたが、これからの経済発展のために二酸化炭素排出の増加が不可避な発展途上国と先進国との間の対立が依然として激しく、2013年以降京都議定書をどうするかについて引き続き議論することになった。
京都議定書の今後をどうするかについての議論は政府、産業界、学界でも幅広く行われている。議論のいくつかを整理してみよう。

(1)京都議定書の基本を維持するやり方

京都議定書における目標達成のための方法の基本は、各国に課された排出量の上限以下に排出を抑えた国は上限を守れない国に余った排出許可証を売却することができるという仕組み(上限設定と取引)である。ただし京都議定書は先進国と移行国だけに数量目標順守義務を課し、それ以外の国には義務を課していない。このような二分法ではなく所得水準の向上などに応じ発展途上国にも段階的に数量目標への参加を求めて行こうという提案がある。このやり方は多段階アプローチと呼ばれ、EUが提唱している。

(2)排出目標を一人当たり排出量に変更するやり方

排出目標を、排出量そのものではなくて一人当たり排出量またはGDP当たり排出量に変更しようというものである。排出量そのものに上限を決めるやり方だと発展途上国は経済発展に上限を画されることになるので、発展途上国の賛成を得ることは難しいが、この種の目標設定のほうが発展途上国の賛成を得やすいと考えられる。この場合、先進国の一人当たり炭素排出量は高いのでこれを引下げ、発展途上国の低い一人当たり排出量は一定期間引上げを認めることにより、将来的には両者の一人当たり排出量を収斂させ、その上で排出総量を削減させて行くというやり方も提案されている。

(3)発展途上国のナショナル・プロジェクトに着目するやり方

発展途上国はそれぞれ経済発展のために優先順序の高い国家的事業を計画している。こうした事業は大量の二酸化炭素や亜硫酸ガスの発生を伴うものが多い。例えば電化計画のために石炭火力発電所の増設が多数行われると排出量は大幅に増える。これに対して水力発電による部分を増やせば排出量を削減することができる。そのために先進国が支援を行えば発展途上国の経済発展を妨げることなく二酸化炭素の排出を減らすことができる。このようなやり方を中心に据えれば途上国の参加も得やすいだろう。
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以上の他にも興味深い多数の提案が行われている。今後の議論の展開の中で排出量の削減の実効があがると同時に発展途上国が参加するためのインセンティブを兼ね備えた仕組みを見出だすことが肝要である。
KAJIMA INSTITUTE of INTERNATIONAL PEACE