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アジアの将来と外国人の受入

鹿島平和研究所理事
福山大学客員教授
元在ペルー大使
元在ノルウェー大使
妹尾正毅

少子化が現実の問題となり、外国人受け入れの在り方が話題になっている。自民党の有志からは 1000万人の移民受入れ構想が発表され、現行の企業研修・技能実習制度についても経産、厚労両省に加え経団連を始めとする諸企業団体から様々な提案が行われている。
 ソ連圏の崩壊とともに加速したグローバル化はモノからカネへ、カネからヒトへと進む筈である。では、その点からみて21世紀のアジアはこの先どう変わって行くのであろうか。
 中国は2040年には世界のGDP(購買力平価換算)の40%を占め、日本のそれは2%に低下し、一人当たりGDPも中国の3/4となる、というのはノーベル経済学賞受賞ロバート・フォーゲルの推計である。だがその前提をなす年率8%の成長率と云うのはどうか。
 その後に出版された日本経済研究センターの「老いるアジア」は、中国の成長率は少子高齢化の影響で年とともに低下して今世紀半ばには1%を下回るに至り、その時点のGDPは米国より若干少なく、一人当たりでは日本の約 1/2に止まると推計している。韓国等の先発諸国も中国に似た道を辿るが、出足の遅れた東南アジアの国々の多くは比較的高い成長が続くとも述べている。総てが予測通りにはならなくても考える上での参考材料にはなる。
 現在日本を目指す若者の多くは中国人である。国際研修協力機構(JITCO)経由の企業研修生でも中国人が全体の約8割を占め、インドネシア、フイリピン、ヴェトナムがほぼ同数でこれに続き、その他の国からの若者はごく少数である。
 中国がフォーゲルの予測に近い発展を示す場合は、中国人中心の受け入れが続く可能性は乏しく、いずれ東南アジアの国々からの受け入れに重点を移すべきだと云うことになる。日本経済研究センターの予測に近くなる場合はそうとは限らないが、韓国、中国等を含め人手不足が進み、近隣の国々からの人的資源の奪い合い競争が発生しているかもしれない。
 日本の外国人受け入れ政策は、話題のフィリピン、インドネシアからの看護師、介護福祉士の受け入れの例を見ても、国内本位の受け入れ条件は先方からみると極めて厳しい。受け入れ条件の良いアメリカ行きはフィリピンの介護士の間で好評のようであり、比本国の介護士の払底を懸念する米国紙の社説まで現れているが、日本の場合はどうであろうか。
 国際的、構造的にみて、受け入れを認めさえすればよいという時代はいつまでもは続かず、魅力的な条件を示して来て貰うと云う時代が近づいているのではあるまいか。
 米国発の金融経済危機の煽りで、求人難よりも失業者の方が切実な問題と化しつつある昨今の様相であるが、世界経済が成長軌道に戻る際は上述の問題が現実となって行きうる。
 こういう時期にこそ、長期的な観点に立って外国人受け入れの総合的な施策をしっかり検討しておくべきではないか。例えば日本語の習得や留学生の受け入れとその後の就職についてはどうか。この際、もっと思い切った効果的な施策の導入を検討して欲しいと思う。


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