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『チャイナシンドローム』の読後感                 (2006,12,31)

鹿島平和研究所評議員
元在中国大使
國廣道彦

「チャイナシンドローム」をご紹介くださって有難うございました。

日中双方のお互い相手をそうとうよく知っている人が率直に議論したらどういうことになるかがわかる興味深い本でした。


結論は“ああ言えばこう言う”といった言い合いになると言うことですが、読む人がなにか理解を深めるものを見つければそれで意味があると言うことでしょう。例えば、東シナ海の共同開発についての中国側の提案の意味合いについての朱氏の解説は私には参考になりました。
上村氏は日本人が言いたいことをみな言ってくれた感じですが、中国側の理解を深めるために、私は、中国が日本の安保理常任理事国入りに反対運動したことの影響を論じてもらいたかったと思います。また、在日中国人の犯罪問題ももう少し強調すべきなのではないかと思います。


朱氏は確かに日本通ですが、日中両国の価値観に大きな違いがないと論じているのは首肯できません。中国に自由と法の支配の尊重がないということは基本的な違いです。むしろ共通しているのは権威に服従しがちな儒教的価値観ではないかと思われ、それは両国の民主化にプラスになっているかどうか疑問です。むしろ、朱氏が論ずべきは、両国政府は1972年の日中共同声明の中で、「社会制度の相違があるにもかかわらず、平和友好関係を樹立すべきであり」と合意して言うことです。日本が社会制度の異なる国と同盟しないと言うのであれば、それは日本の政策として結構ですが、友好関係は維持するようにしなければなりません。


中国で日本の将来についての疑念が消えない理由として、朱氏がp222に挙げている三つの点((1)日本は「これはするが、これは絶対にしない」という一線が見えない、(2)日本の政府要人が日本の重みを自覚しない発言をする、(3)日本社会に本当に健全な牽制勢力があるか疑問)は日本として考えなければならないことであると私も思います。

朱氏が日本の新しい世代は中国に対する蔑視感を持っていないのではないかと期待しているのは初耳でしたが、現実であることを願います。また、日本人は強大になった中国とどうつきあうのか早く考えを決める必要がある上村氏の考えは大いに賛成です。

KAJIMA INSTITUTE of INTERNATIONAL PEACE